愛されて
「ただいま…」

家の玄関を開けると…
すぐに。
ママがやって来た。

「何、やっていたの?もう、6時20分よ…塾に間に合わないでしょう?」

私は車の中で制服から私服に…
礼儀作法に厳しいおばあちゃんは制服で塾に行くことを許さない。

中間テストが終わったから…
少し遊びたいのに。
塾なんて…
イヤだな…

でも…私が遊びを許されるのは…
ママやおばあちゃんが希望する高校に入学できた時だろう。


「樫木、遅いぞ…」
道も混んでいた為、塾には5分遅れた。
教室に入るなり、先生から叱られた。

「樫木、お前…最近たるんできているぞ!この前の小テストなんて…16位じゃないか。ちょっとは気を引き締めて頑張りなさい…」

先生から怒られる私を。
みんな、迷惑そうな顔で見ていた。

お説教の分、授業時間が減るから…


「ただいま…」
「おかえりなさい…」
家に帰るなり、
私は…おばあちゃんから答案用紙を持ってきなさいと言われた。

「はい…」
返されたテストを3枚渡した。

「何で…こんな簡単な問題を間違うの?」
おばあちゃんが数学の答案用紙を見ながら言った。

おばあちゃんは…
頭がいい。
中学生の問題だって、スラスラ解く。

次は英語…英語は98点だった。
スペルが間違っていて、100点にはならなかった。

「これは…テストじたいが簡単だね。こんな簡単なテストで100点も採れないなんて、遥香は本当にダメだね…梨香なら…」
おばあちゃんが言った。

「英語の試験が簡単すぎると学校に言って、クレーマーと思われたら…世間体にも悪い。由香さんから歩香さんに言ってあげたら?テストが簡単すぎるって…保護者の間で噂になっているって…」

おばあちゃんが言うと。
「そうですね。姉に行っておきます…」
と苦笑いして言った。

そう…
英語の歩香先生はママのお姉さんで。
私の伯母にあたる。

そして…パパとは幼なじみ。

「歩香さんも子育てや家事で大変だと思うけれど、3年生の英語を受け持つには…それなりの問題を作ってもらわないとね…」

「そうですね…」
そう答えるママは笑っていなかった…
怖かった…
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