詩音〜utaoto〜




ほとんどの部活動は3年生が引退した中、うちの学校の野球部だけは強豪らしく次の大会に向けて毎日練習をしている。


橘も部員の一人なのに、こうやって時間よりも早く抜け出してくるのはきっと補欠なんだろうな。




「今度の大会っていつなの?」


「何、片瀬応援に来てくれるの?」




会話が途切れないように話題を振っただけだったのに、意外にも橘は食いついてきた。




「……行かないよ」


私は半ば呆れ気味に素っ気なく答える。




「なーんだ。来るのかと思った」


「行くわけないじゃん。日焼けしたくないし」


「来たらいいのに。日傘もって」


「やだよ。そんなのダサいもん」


「アハハ。じゃ、帽子かぶれば?」


「つぅか、行かないし」


「何だよ、来てくれたっていいじゃん」




< 11 / 48 >

この作品をシェア

pagetop