詩音〜utaoto〜
「……」
ちょっとぉ、黙り込まないでよぉ!
どうしていいか分かんないじゃん!!
私が橘の反応に焦って考えていたら、ようやく橘が口を開いた。
「……なぁ、見に来いよ?」
「!」
見た事のない真剣な眼差しに私は戸惑う。
彼氏イナイ歴15年の私にこの空気は耐えられそうもない。
そんな私をお構いなしに橘は話し続ける。
「片瀬に来てほしいんだけど……」
「だ、だ、だって橘は補欠なんでしょ?」
この空気を何とか壊したくて、私はどもりながらも明るく言い返す。