詩音〜utaoto〜




私はイライラする気持ちを落ち着けようと、ベッドに横になり枕に顔を埋めた。


隣の部屋から音也のバイオリンが聞こえてくる。




パッヘルベルの『カノン』……。




私の好きな曲。




私と同じ事しかしようとしなかった音也が、唯一私と違う道を選んだあの日の曲。




「謝ってるつもり?」




私は投げやりな言葉を吐き出すと、優しい音色の中、薄暗くなってきた空とともに瞼が重くなるのを感じた。





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