詩音〜utaoto〜
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高鳴る鼓動。
温かい声援。
たくさんの拍手。
黄色いドレスに身を包み、あどけない顔をした少女が大勢の観客の前にいた。
少女は深々とお辞儀をすると、満足気な笑みを浮かべて舞台を去って行った。
練習通りに弾けた。
いや、それ以上かもしれない。
指先が踊るように美しい旋律を奏でた。
パッヘルベルの『カノン』
少女の一番好きな曲。
少女はこれまでにない程の充足感でいっぱいだった。