詩音〜utaoto〜
「え?音也がどうしたんですか?」
「……お前の書いた志望校は”高校”。音也が書いたのは”詩子と一緒”だとさ。5組の田崎先生が嘆いてたよ」
「……あのバカ」
私が一言そう呟くと、母はまた謝る。
「本当にすいません。ちゃんと言って聞かせますんで」
すると、先生は急に真面目な顔をした。それを見て私も思わず背筋を伸ばしてしまう。
「詩子、ピアノは続けるんだろ?」
「……」
予想外の先生の質問に私は黙り込む。