詩音〜utaoto〜
「いや、な、何もっ?」
私は声を裏返しつつも必至で否定した。
「ふ〜ん、怪しいなぁ」
実夕はそう言って小さく笑うと、げた箱から上履きを取り出し靴を履き変えた。
私もそれに倣って上履きを履く。
さっきまで少し忘れかけてた昨日の事を実夕の言葉で思い出してしまったから、教室へ近付く度に緊張が増してくる。
う〜〜〜。
教室に入るのやだなぁ。
てゆうか、橘と会いたくない。
だって私の席、橘の後ろなんだもん。
授業中はまだいいとしても、プリントとか配られたら橘がこっち向いちゃうじゃん。
そう考えるだけで、すごく気が重い。