詩音〜utaoto〜
「おぃっす」
「!」
後ろからポンと肩を叩かれた。
「あ、橘。おはよう」
実夕が振り返って応える。
だけど、私は振り返れない。
「な、なんだよ、片瀬。挨拶くらいしろよ〜!」
橘はまるで昨日の出来事がなかったみたいに、笑いながら私の肩をもう一度叩いた。
ちょっとぉ!何なの〜?!
私にはそんな器用な真似できないんですけど?
「……おはよッ!」
私は振り返りもしないで投げやりな挨拶をすると、実夕と橘を置いて先に教室へと入った。