詩音〜utaoto〜
「詩チャン、大した事なくないでしょ?」
教室から出た母が私に言う。
「まったく、これからどうするの?お母さん恥ずかしくて頭痛くなっちゃうわよ!」
お母さん、さっきと人格変わってますけど?
先生の前では謝り倒してたのに、今は手をパタパタさせて眉間にしわを寄せている。
母が焦ったりした時にする癖だ。
「分かってるよぉ。ちゃんと考えるから」
「もう、しっかりしてよね。お姉ちゃんなんだから!」
「それより、これから音也のクラス行くんでしょ?」
「あぁ!そうだった。音クンも大丈夫かしら?お母さん田崎先生に何言われるか心配になってきたわ」
そう言いながら、母は東校舎へと続く渡り廊下をそそくさと歩いて行ってしまった。