詩音〜utaoto〜
「何?音也もこれから面談なの?」
「そだよ。一日で済ませちゃった方が楽じゃん?だから、先生にそうしてもらえるように頼んでおいたの」
「双子は大変だな。あ、大変なのは母ちゃんか」
野上はアハハと大きな口を開けて笑いながら、寺岡先生の待つ教室に入っていく。
教室に入る時に野上のお母さんが私に向かって会釈してきたので、私も小さく会釈を返した。
廊下に一人取り残された私は、何となく壁際に置かれたパイプ椅子に座る。
どうせ音也の面談が終わるのを待つつもりだったし、母は車で来ているだろうから帰りはそれに乗っていく事にしよう。