詩音〜utaoto〜
「思い出し笑いかよ。エロいなぁ」
「!!」
誰もいないと思ってたのに、突然、後ろから声がした。
聞き覚えのあるその声。
「橘でしょ……」
私は振り返る。
「そうだけど?」
野球のユニフォームに身を包んだ私よりも頭一つ長身の橘が、ニヤニヤと笑いながら私を見下ろしている。
野球部の練習で真っ黒に日焼けした顔に白い歯がやけに目立つ。
同級生にはいまいちモテない橘もなぜか後輩には人気があって、何度かラブレターらしきものを受け取る姿を見た事がある。