ろく


−すみません……。やっぱりいいです……。


泣きそうになりながら商店の軒先に座る。

いつものクセで携帯電話を触る。

今では携帯電話ひとつで買い物が出来るというが、田舎には関係がない。

つまりラムネは買えない。



その時だった。

携帯電話が鳴る。

ラムネのことばかり考えていた私は、画面を確認することなく電話に出た。

すごく不機嫌な声で。


−あ゛い

「優子? オレ……わかるか?」

−…………

「今日な、ちょっと不思議なことがあって……。いや、それはどうでもいいんだ。まずは優子に謝りたいことがある。会って話をさせてもらえないか?」

−…………

「優子?」

−……ラムネが飲みたい……。ラムネが……ラムネが……。


その後は言葉にならなかった。

携帯電話を握ったまま、子供みたいにわんわん泣いた。

あまりに泣きすぎて、心配した商店のおばあちゃんがラムネを奢ってくれた。



やった!

今日はラムネが二本も飲める。

これから迎えに来る航太にも奢ってもらうんだ!
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