ろく
航太の話によると、私はその場にしゃがみ込み、一時間くらいろくを呼び続けていたらしい。
だけど、私たちにはもう一度、あの路地に入ってろくを助ける気力も体力も残っていなかった。
それと、私たちが逃げるきっかけになった呟き、あれは航太ではなかった。
航太自身もあの呟きがきっかけで逃げることが出来たと言っていた。
パニックでどうしてよいかわからなくなっていた時にあの声が聞こえ、何故だか疑うことなく行動に移せた、と。