ろく


−もう傷は大丈夫なんですか?

「ん? ああ、お蔭さんでな。もう殆ど痛まねえよ」

−やっぱりあの時の傷が原因……

「まあ原因っちゃ原因なんだけどよう。アイツ等とは何れ決着をつけなきゃなんねえんだ。見ただろ? あの一番でかい奴。三丁目の奴なんだけどよ。アイツがまた悪い奴でな。盗みに入った先で「人」の赤ん坊が泣いてるとすっだろ? アイツならその内手にかけんじゃねえかな? 泣かれたら盗みが出来ねえからな。ただそれだけの理由でな」

−そうなんですか……。


私はこの間の経験があったからこそ、ろくの話が心底怖かった。

あれが無くてこの話を聞いていたら、昔見たB級映画程度の感想しか残せなかったかもしれない。

「ああ、猫ね」と。
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