ろく
−こんにちは!
「おや、いらっしゃい。今日もソーセージかい?」
−はい! それに今日はろくに会いに来ました!
「ろくに? よっぽど猫が好きなんだねえ」
いいえ、違いますよおかみさん。
私は猫が好きなんじゃなくて、ろくが好きなんです。
「あんたも幸せもんだねえ、ろく。いっそ、このお嬢ちゃん家の子になるかい?」
私の声を聞きつけて出てきたろくは、おかみさんの言葉を、シャム猫のように(いや、間違えた。ろくはれっきとしたシャム猫だった)ツンっとすまして聞き流し、コンビニの自動ドアから出て行った。
−おばさん。ろくの風邪は大丈夫でしょうか?
「ん? 風邪? あの子、風邪引いてるのかかい?」
−この前会ったとき、咳とくしゃみをしてたもんですから……。本人は大丈夫って言うんですけど……
「ああ、そうなのかい。気をつけとくよ。ありがとうね、お嬢ちゃん。ろくに優しくしてくれて」
−いえ、友達ですから。
「お嬢ちゃんは本当に猫が好きなんだね! さっきから聞いてると、本人は……とか、友達ですから……とかさ。猫相手じゃないみたいだよ。なんだか人間同士みたいだね、あんた達!」
私は冷や汗をかきながら、おばさんの「いってらっしゃい」の声に送り出されてコンビニを出た。
注意しなければならない。
危うくろくが話せることがばれるとこだった。