男装ホスト.Lie ~私の居場所~




『ちょっと!!放して…自分お金なんて持ってないし!他当たって…』












すっかり慌ててしまい振り払おうとするが、その人はがっしり掴んで離さず走り出す。




どこに連れ込まれるのかと思うと治まりかけた胸がまた悲鳴をあげ始めたが、それに気づく筈もなく彼はどんどん進んでいった。

















『…っぁ…はぁっ…かはっ!』







もう色んな意味で終わりだ、と思い始めた頃。



私の変調に気づいたのか男が足を止めこちらを振り返った。














「もしかして具合悪かったん?」



『っ、ん…』














逃げる絶好のチャンスだと思うけれど、体は言うことを聞かず頷く事しか出来ない。
















…ふと中腰で私の顔を覗き込む男と目が合う。













『…あ。』












それは、意外にも私の知った顔だった。











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