男装ホスト.Lie ~私の居場所~
慎「…もしもし」
どうしよ、イタズラだと思われてしまう。
…それでも声が出せないでいる私に、思いがけず優しい声が聞こえた。
慎「…もしかして、翔央?」
『っ!?』
慎「良かった。無事なんやな?」
何で…?
何で、私だと分かったんだろう。
『…はい。ご迷惑、お掛けして…』
慎「迷惑とは思ってへんよ。ただ、心配はしてる」
『…ごめんなさい、俺…!!』
慎「今どこに居んの?」
『あ…知り合いの家に、お世話になっていて』
慎「友達?」
『…はい』
慎「そ、か…なら一安心やな」
『俺、店…いきなりで申し訳ないんですけど、辞めます。それを言っとかなって…』
慎「…うん。それは捺生に言われたから?」
『それもあります…けど、やっぱりあそこに自分は異質やったと、思って』
慎「…いしつ?」
『居たらいけないって、忘れてたんです』
そう、居たらいけない。
存在する権利さえ持っているのか危うい私には。
慎「…それ決めるのはお前なん?」
電話口から厳しい声が聞こえた。
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