男装ホスト.Lie ~私の居場所~
電話は相手に切られた。
もう、何とも繋がってはいない。
今やそこから漏れ聞こえるのは無機質な音だけだった。
捺「…慎?」
喋る事もなく電話に耳を当てたままで居る俺を不自然に思ったのか、捺生が訝しげな目を向けてよこした。
慎「…あぁ、起きたか。体調は?」
捺「うん…何も。…何してたん?」
慎「電話あって。翔央から」
捺「!!どこにいるって!何やって!?」
慎「知り合いのとこやって」
捺「…知り合い?」
慎「友達やって。…店は、辞めるらしい」
捺「っ!?」
慎「よく考えろとは言った。…けどあの子、強情そうやしな…」
捺「…捜さな」
慎「だから知り合いのとこに居るから取り敢えずは大丈夫やって…お前が無駄に倒れる必要ないやろ」
捺「…分からへん。アイツの言う事が真実かどうか。友達なんて…」
慎「…こんな時まで信用ならへんのか?」
捺「ちゃう…心配掛けんが為に嘘言う可能性もあるって事や」
慎「…そうか」
捺「…今日は店に出るよ。これ以上迷惑掛けられへんし」
慎「お前もか…」
捺「あん?」
慎「いや…3ヶ月も無断で休んだんや、もう少し休んだって変わらんで?」
捺「…そうやな。ごめん、あん時も迷惑かけたな…」
慎「捺生、今のは笑うとこやで…?」
捺「…」
あかん。
捺生は自分を責めてる。
翔央は自分を在ってはならないものだと思ってる。
このままじゃ、二人が交わる事はない。
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