男装ホスト.Lie ~私の居場所~
捺「俺を置いて出て行こうとした母親の背中に縋った。けど、その手は振り払われた」
泣いて縋った。
自分も連れて行って欲しいと。
そんな俺を母親は今までに見た事のない冷たい顔で見下ろし、言い放った。
「お前にもう用はない」
…意味が解らなかった。
信じられなかった。
でも真実はこう。
俺は母親にとって金づるに過ぎなかった。
後継者として将来を保証されていたから。
だから、俺を手懐けておく必要があった。
母親は、得た金を外で湯水のように使っていたらしい。それも若い男に。
父親が何をやっても責める訳がない。
だって、元々2人に愛なんて無かった。
親父は有利に会社をデカくする為の、母親は金を手に入れる為の、手段に過ぎない形だけのものだったんだから。
だったら、そんな2人の間に生まれた俺は道具に過ぎない。
意思なんて持たず、ただ言われた通りにレールの上を走る。
…走ってきた、それまでは。
捺「初めて反発した。…それが勝手に決められた婚約だった」
『…え』
.