男装ホスト.Lie ~私の居場所~
捺「家族なんていなかった。要らなかった。だから、絶対に嫌だった」
俺みたいな子供を作りたくなかった。
だから親父の持ち駒でいることから、逃げ出した。
捺「20の時、大学を勝手に辞めてふらふらしててん。…ある夜、慎に会った」
『慎さん?』
捺「うん。アイツ、何でかな。見ず知らずの俺の事、家に住まわせてん」
『…その時は店は』
捺「そん時は慎はただのホストやった。店作ったのはその2年後か」
『そう、なんですか…』
捺「俺、母親が出て行ってから、自分の居場所なんてないと思ってた。…けど、慎に会って、居場所と思える場所を見つけた。それが、今の店や」
こんな、自分の話をするのは初めてや。
捺「……お前は何でここに来たんや」
『わ、たし…?』
捺「…」
『私は、…自分が、自分じゃなくて…見てもらえなくて…嫌われてるのに、解放してくれなくて…』
捺「…うん」
『…私は、自分が自分で居られる居場所が、欲しかった…っ』
捺「そうか。…お前は、持ち駒になる気はないねんな?」
『持ち駒…?』
捺「元居た場所に帰る気は、ないねんな」
『っ!帰りたくない!』
捺「…なら足掻こう。お前の人生、籠の中の鳥で終わらすな」
『はい…っ』
捺「…あぁ…泣くなって」
『す、みませんっ』
捺「…まぁ、…俺のせいか。今日のとこは許したる」
『っ…く…はぃ…っ』
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