男装ホスト.Lie ～私の居場所～

捺「俺は、藤原捺生。お前の名前は？」



『…莉依です』



捺「…リエ？五十嵐莉依？」



『…』


















私が逃げ出して来た“五十嵐家”。




五十嵐家は捺生さんの実家同様、経済界では高い地位を持つ由緒正しき家だった。




私は五十嵐家に生活を保障してもらうのと引き換えに、その名前を与えられた。




そしてそれはその名の女性の人生も背負う事も意味していた。















『すみません…』






それは世間に伏せた、五十嵐家のトップシークレット。




捺生さんが相手でも、言う事は許されない。




いや、捺生さんだからこそ。





















捺「ええよ。無理に聞くつもりないから」



『…捺生さん』



捺「…ほら、帰んで」



『ありがとう』



捺「…別に」

























捺生さんとずっと重ねていた。




娘の名前を与えその人生を歩ませる事を強制しておいて、私の存在を嫌い冷たくあしらう義父を。




彼にとって私はモノでしかなくて、…











似てると思ってた。



けど全然、違った。


















いつか、言える時が来たならその時は、




…そんな日が果たして来るんだろうか。

















絡む運命に思いを馳せ、今はただそこに在る温もりに体を寄せた。









.