男装ホスト.Lie ~私の居場所~
凌「ん、手出して?」
『手?ハイ…』
凌「はい、よし♪」
『…よしって、何ですか?この手』
凌さんから手を通じて体温が移る。
凌「何って…デートやし?嫌?」
『…嫌、じゃないですけど』
凌「良かった、嫌って言われたらどうしよかと思った」
『…』
そんな目で顔を伺われて、断れる人間なんかいるだろうか。
凌「さて、どこか行きたいとことかある?」
『いえ、特に…』
凌「じゃあ俺見たい映画あんねん。付き合って」
『分かりました』
映画なんていつぶりだろうなんて考えていると、不意に凌さんが立ち止まった。
どうも誰かに話かけられたみたい。
凌「…何ですか?」
「あ、怪しいモンちゃいますって!!お兄さん芸能人かなんか?」
凌「…」
凌さんの背中越しに相手をうかがう。
随分軽いノリの男性と、もう一人が道を塞いでいるようだ。
訝しげだった凌さんがだんだん不機嫌になってくのが少し伝わってくる。
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