男装ホスト.Lie ~私の居場所~
『…ふぅ』
1日って、こんなに長かったっけ?
外に行くのを控える様にと比呂さんに言われていて、1日ホテルの一室に居た。
顔を合わせるのは、ルームサービスを運んでくれたホテルマンの人だけ。
普段賑やかな人達と居るし、一応接客業してる訳やから、こんなに一人の時間が長いと戸惑ってしまう。
…まあまだ1日なんだけどな。
夜遅く。
ガチャンとドアが開く音がした。
『…比呂さん?今電気を…』
鍵を持って出ていったから多分そうだろうと、ベッドから起き上がり明かりをつけようと手探りで電気を探す。
なかなか見つからず少し焦っていると、不意に伸ばした手に柔らかい感触が伝わった。
咄嗟に手を引っ込め後ずさると、同時にバランスを崩してしまう。
『っぁ…』
痛みの変わりに私を包んだのは柔らかい体温と、ほのかに香る香水の匂い。
自分が支えられていると気づくのに時間はかからなかったが、違和感を感じた。
…比呂さんじゃ、ない。
『…だれ、ですか…』
「…」
『比呂さんの、知り合い…?』
「…これを、君に」
『え…?』
手に握らされたのは、何やら固い物体。
暗がりではそれが何か判断する事が出来ない。
『これは…?』
「…大事なモノだよ。忘れてはいけない記憶だ」
『大事な…?』
「…また迎えに来るから」
『え…』
温もりが離れた。
そして静かにドアは開かれ、彼は去って行った。
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