男装ホスト.Lie ~私の居場所~
『…ふふ、』
隼「笑い事違うで?」
『だって…ごめんなさい、おかしくて…ふふっ』
やっといつも通りの笑顔がりぃに戻ってきた。
「…何笑ってんのよ」
しかしその笑顔は、不意に聞こえた呟きを発した主によって一瞬にして消されてしまった。
『…お、か…さん…』
「何で笑ってられるのよ」
『あ…あ…』
りぃは突然現れた女を“お母さん”と呼び、怯えた表情を向けた。
女は読み取れない表情でそこに立っている。
…昔は大層綺麗だったんやろうと思われる女の顔の造形は、年齢を必要以上に感じさせているような深いシワが刻まれていた。
隼「…あんた、こいつの母親?」
間違いない。
きっと今日こいつの頬を腫れる程殴ったのはこの女だ。
親子喧嘩なら口を挟む筋合いはない。
けど、…そうじゃない気がした。
りぃは、俺みたいに問題を自分から起こす様な奴じゃない。
殴られるような原因を、こいつが作るハズが無かった。
「…この子にちかづかないで」
隼「…は?俺の勝手やろ」
「うるさい!」
隼「はっ…?」
「黙れ…黙れ!」
隼「えッ、な、ちょっ…待っ…!」
俺の質問には一切触れず、女が鞄から取り出したソレは夕陽を反射しキラリと光った。
そして、真っ直ぐ女は俺に近づいてくる。
刃物を手にゆっくり近づいてくる女を、俺はただ目で追っていた。
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