男装ホスト.Lie ~私の居場所~
離れなきゃいけない。
大事な人がたくさんあの店にはいるから。
私を大切に思ってくれている人がいたから。
ずっと分かっていつつ踏ん切れなかった自分を、光輝さんと隼人さん―…お兄ちゃんとシュン君の存在が私の背中を押してくれた。
部屋に戻って荷物を纏める。
比呂さんには朝になったら連絡を入れて消えよう、そう思ってベットに横たわった。
離れる事は寂しい。
きっと今あの家へ戻ったら軽々しくみんなに会える事はできなくなる。
けど…
私が居なくなる事で、少なくとも無駄な火の粉が大事な人達に降りかかるのだけは防げるだろう。
『…それに』
自分ですら大事じゃなかった自分を、想ってくれている人が居たと言うのは、私の心を強くした。
その事実は、あの家でどんな扱いをされたとしてもきっと私を支えてくれる。
朝になったら比呂さんにメールを…
何て打てばいいかな・・・
携帯を片手にゆっくり眠りに落ちる。
夜が明ければ色々なものと決別しなければならない、それなのに、
夢に落ちる私の心は不思議な程穏やかなものだった。
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