男装ホスト.Lie ~私の居場所~




捺「…決めた訳は?」



『え?』



捺「何で急に、そう決めた?」








それだけは聞いておきたいと思った。


本当に未練は無いのか。








『…私、ずっと誰にも愛されてない、必要無い人間だって思ってました。だから、あの家でどんな扱いを受けてもしかたないって』



捺「…」



『けど、違ったから。想ってくれる人がたくさん出来た。外で待ってくれていた人がいた』



捺「…うん」



『私が帰る事で、その人達の居場所を守れるかもしれないから。…それは、私も嬉しいから』



捺「…お前が犠牲になるって事に、皆は何とも思わないと思うか」



『…捺生さんが内緒にしてくれれば分からない話です。ただ、家に帰ったんだと伝えてください』



捺「…勝手な事を」



『比呂さんと捺生さんには、本当に申し訳ないと思ってます。感謝も、してるんです』



捺「…感謝なんてされる覚え、無い。何も出来てない」



『ううん。…守ってくれるって言ってくれた。私を受け入れてくれました』



捺「口だけなら何とも言える」



『それでも、私は嬉しかった』



捺「…っ」
















耐えられなくなって、顔を逸らす。




もう、…俺には引き止められないと解ってしまった。










.
< 330 / 443 >

この作品をシェア

pagetop