男装ホスト.Lie ~私の居場所~
捺「…決めた訳は?」
『え?』
捺「何で急に、そう決めた?」
それだけは聞いておきたいと思った。
本当に未練は無いのか。
『…私、ずっと誰にも愛されてない、必要無い人間だって思ってました。だから、あの家でどんな扱いを受けてもしかたないって』
捺「…」
『けど、違ったから。想ってくれる人がたくさん出来た。外で待ってくれていた人がいた』
捺「…うん」
『私が帰る事で、その人達の居場所を守れるかもしれないから。…それは、私も嬉しいから』
捺「…お前が犠牲になるって事に、皆は何とも思わないと思うか」
『…捺生さんが内緒にしてくれれば分からない話です。ただ、家に帰ったんだと伝えてください』
捺「…勝手な事を」
『比呂さんと捺生さんには、本当に申し訳ないと思ってます。感謝も、してるんです』
捺「…感謝なんてされる覚え、無い。何も出来てない」
『ううん。…守ってくれるって言ってくれた。私を受け入れてくれました』
捺「口だけなら何とも言える」
『それでも、私は嬉しかった』
捺「…っ」
耐えられなくなって、顔を逸らす。
もう、…俺には引き止められないと解ってしまった。
.