男装ホスト.Lie ~私の居場所~
Lie.4 交差する想い
奪還作戦
『…勝手してすみません。今、帰りました』
「ああ。よく帰ってこれたな」
『…すみません』
「こんな事は二度と許さない。…分かっているな」
『はい』
義父の私に対する態度は予想通りだった。
仕事の資料が広がる机に目を落とし私に目もくれない。
…と、不意に扉をノックする音が響いた。
「七瀬です」
「ああ、…入れ」
「失礼致します」
自分には関係無いと扉に背を向けたままの私に、義父が言った。
「お前に世話係をつけてやる。ありがたく思え」
『は…?』
「七瀬だ」
『…七瀬、さん?』
「“はじめまして”、七瀬と申します」
『…』
…もう、この家で驚く事なんて無いと思っていた。
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