男装ホスト.Lie ~私の居場所~
晴「何で止めるん?凌さん…凌さんも一緒帰ろ?」
凌「帰る?」
由「凌、お前五十嵐の人間やったん?なら何の為にあの店に二年も居た?」
凌「何の為に…。捺生さんの監視の為、ですかね」
由「な…騙してたん?」
凌「騙す?そんなつもりさらさら無かったですけど」
由「現にお前、店と全然ちゃうやん。捺生油断させて俺ら油断させて、騙しててんな?なぁ!」
凌「…それの何がいけないと?それならあなたと同じようなものだと思いますが」
由「っ…」
凌「誰しも本当の自分を人にさらけ出している訳では無いのですよ」
由「…くそが」
凌「そろそろお引き取りくださいますか?下のお連れさん達もお帰りの時間だ」
晴「え…知って…?」
凌「ええ。私が通しましたので」
由「何で…」
凌「乗り込もうだなんて、その馬鹿馬鹿しい熱意を買ったんですよ。菜穂様にも最後のお別れを、と思いましたし」
由「凌…てめぇ」
『由樹さん…すみません、お引き取りください』
由「はあ?お前まで何…」
『今までありがとうございました』
凌「ああ、あと20分程で悠様が帰られます。あの方は私ほど優しくない…今のうちに大人しく帰ってください」
晴「え…今日は帰らないんじゃ」
凌「悠様は過保護ですからね…」
由「莉依!俺らと来い!」
『…』
由「莉依!」
『…さようなら』
由樹さんの伸ばした手は宙を切り、扉は再び閉ざされた。
残ったのは何とも言えない空虚感だけだった。
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