男装ホスト.Lie ~私の居場所~
彼の正体
不意にドアを叩く音が聞こえた。
由樹さんと晴樹が帰ってしばらくしての事だ。
『…はい』
悠「俺だ」
『…』
悠「入るぞ」
『…はい』
本当に帰って来たんだ。
最近はどこか外国の企業と提携を結ぶとかで忙しいと言っていたのに。
悠「…何だ、お前も居たのか」
凌「ええ。24時間目を離すな、そう旦那様から仰せつかっておりますので。お早いお帰りでしたね、明日と伺っていましたが」
悠「まあな。菜穂を一人残して置くのは心許ない」
凌「はは、手厳しいですね。そんなに信用ないですか、私は」
悠「ふん。…菜穂、不自由は無いか?変わった事は…」
『…』
義兄が帰ってくる事なんてお見通しだったくせに。
この人は…本当に何なんだろう。
私がこの家へ戻るに当たり、突然世話役としてあてがわれた彼をそっと見上げる。
白々しく微笑み立つ姿はあの日と変わらないものだった。
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