男装ホスト.Lie ~私の居場所~



そうだ、そんな事より。











『…凌さん』



凌「…七瀬、とお呼びください」



『凌さん』



凌「…」












凌さんは終始微笑みを絶やさずこちらを見ていた。



ここに居る理由を聞く為に私も彼を見つめる。



数秒間、数分間の時間が流れた。















凌「…負けました」







そう言い一回うつむいた後ゆっくり顔を上げた凌さんは無表情で、ぞくっと背筋が冷えた。








凌「何が聞きたい?」



『え…あ、』



凌「聞きたい事には全部答えたる。けど、その後は俺はただの使用人。名前で呼ばんといて」



『な…説明してくれなきゃ、何が起きてるのかさっぱり…』



凌「そう、それで?」



『それでって…何で凌さんがここに?店はどうしたんですか』



凌「店?辞めた。居る理由も無くなったし」



『理由って…?』



凌「藤原捺生。あの人の監視と報告、それが俺の目的」



『え…』



凌「あと聞きたい事は?」



『ちょっと…何それ、どう言うっ…』



凌「どうもこうも、それが仕事だったから。他に理由がいるん?」



『騙して…て?そんなスパイみたいな…っ、そもそも義父は捺生さんの居場所を知ってて…?』



凌「知ってたよ。旦那様も藤原も。知らなかったのは捺生さんだけや」



『な…じゃ、じゃあ私があの店にいる事も最初から義父は知っていて…?』



凌「いや、それは知らん。俺の仕事はあくまで捺生さん絡みだけやったし。…ま、悠さんが調べて辿り着いた位やから知ってんのかも分からんけど」



『そうですか…。そもそも凌さんはこの家とどんな関係が…』



凌「使用人の息子、みたいなもん。昔から世話になっとる」



『…』







頭、ぐるぐる。












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