男装ホスト.Lie ~私の居場所~
昔からお世話になってると言うなら、私が知らなかったのは何故?
そう考えて知らなくても不思議では無いとすぐに気づく。
私は必要最低限な事しか教えられてはいなかったんだから。
『…本当の凌さんはどっちですか』
凌「ん?」
『本当の凌さんはどこに在るんですか』
凌「…よく分からんねんけど」
『…』
もし、凌さんが皆を騙していたんだったとしても、私には何を言う資格も無いんだ。
私も、同じようなものなんだから。
『…やっぱり良いです』
凌「他に聞きたい事は」
『ありません』
凌さんの事をみんなが知ったら悲しむやろな。
お店ちゃんと回んのかな。
晴樹、寂しがるやろな…
凌「じゃあ俺から一つ」
『はい?』
凌「さっきも言った通り、俺の事は“七瀬”って呼んで」
『…七瀬さん』
凌「…まあええ。あと、俺とお前は今日が初対面。ええな」
『…?』
凌「要は馴れ合うな、って事や」
『…』
凌「じゃ、よろしくお願いしますよ?“菜穂”様」
『…はい。七瀬、さん』
またゆっくり頭を下げ上げた顔は、違和感のあるあの顔で微笑んでいた。
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