男装ホスト.Lie ~私の居場所~
待ち望んでいない物事程、早く訪れてしまうのは何故なんだろう。
捺生さんとの会食を控えた午後、私は凌さんに連れられるままにエステへ来ている。
『何でこんなとこに…』
凌「ええ、菜穂様が少しでも綺麗なお姿になったら藤原様もお気に召すだろう、と旦那様が」
『…つまり素の私は役不足って事ですね』
凌「さあ…旦那様がその様に思っていらっしゃっているかまでは把握しておりません」
『…』
今更、捺生さんの前で取り繕って何になる。
そもそも捺生さんの意図が分からないでいるのに。
助けようと差し伸べてくれた手を振り払って来たのは私なんだから、…怒りにきた?
有り得なくはない、のかな。
『…凌さんは同行してくださるんですか?』
凌「私は、お嬢様の指示に従います。どちらにしてもすぐ駆け付けられる場所にはおりますが」
『…一緒に来て、って言ったら?』
凌「勿論、ご一緒させていただきますよ」
『捺生さんと会えるの?』
凌「問題ありません。もう彼の監視の役目は終えましたし」
『…そう』
来て、もらった方が心強い。
意図の読めない捺生さんより、何を考えているのか分からない凌さんの方が安心出来る。
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