男装ホスト.Lie ~私の居場所~
着慣れない薄手のワンピースを着て、頭にはウィッグを付け化粧まで施される。
全ては義父の指示。
女はこうあるべきだ、と言うものが彼にはあるらしい。
家に戻った私に向けられた蔑みの視線の何パーセントかは勝手に切った髪にあった事だろうと思う。
『…まるで着せ替え人形やな』
凌「…菜穂様。訛りが」
『…独り言です』
凌「独り言は他人には聞かれない様に言うものですよ」
五十嵐家は元々関西にある家系じゃない。
だから暗黙のルールとして関西弁は禁止されていた。
『…凌さんはわざわざ標準語話す必要あるんですか?』
凌「ビジネスの世界は標準語がベターかと。それに旦那様が嫌がりますので」
『…へえ』
それは知らなかった。
凌「…それにしても菜穂様は本当に学習しませんね」
『…?』
凌「七瀬、とお呼びくださいと。…次名前で呼んだらお仕置き、ですよ」
『…気をつけます』
前言撤回。
…この人相手に安心なんて、出来ないかも。
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