男装ホスト.Lie ~私の居場所~
そして約束の時間はやって来る。
高級感漂うホテルのレストランで私たちは対峙していた。
『…五十嵐、菜穂です。本日はお誘いいただきありがとうございます』
捺「…」
頭を下げた私がもう一度顔を上げた時、捺生さんの視線は私の後ろに向けられていた。
捺「…誰かと思えば。何故お前がここにいる?」
凌「菜穂様が私の同行を希望されましたので。…席を外した方がよろしいですか?
捺「は?」
ああ、そうだった。
『し…七瀬です』
捺「七瀬?」
凌「すみません…名乗るのが遅くなりまして。七瀬凌と申します。五十嵐家に仕えております」
捺「…いつから?」
凌「そうですね…10年程経ちますでしょうか」
捺「そうか。あの店に居たのも仕事のうちだった…って事やんな?」
凌「お察しの通り」
捺「ふうん」
凌「…あまり驚かれないのですね」
捺「別に。…それより席を外してもらえるか?」
凌「え…あ、しかし」
捺「こいつの許可が必要か?」
凌「…ええ」
捺「なあ。俺と二人やと何か問題でもあるのか」
『…!!…別に、問題ない…です』
捺「やって」
凌「…かしこまりました。では私はこれで。…菜穂様、時間が参りましたらお呼びください」
『…はい』
…有無を言わせない捺生さんの言葉と目力に私は従うしか無かった。
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