男装ホスト.Lie ~私の居場所~
悠「申し訳ないがこの話は無かった事にしてくれないか?」
捺「それは…うちでは不服だと?五十嵐御頭首も同じお考えなのですか?」
元より、対等な関係と言われながらも若干の分は五十嵐にあった。
五十嵐が泣いて結び付きを求める様な会社にする事、その為に俺は家に戻りこうして夜な夜な職務に就いていると言うのに。
…遅かったか?
悠「いや、俺の独断だ。しかしこれは君達の為にもなる話だ」
捺「…は?」
悠「他言無用だが、君にだから話す。あの子は本物ではない」
捺「…」
悠「あれは失踪した私の妹の代わりとして連れて来られた可哀想な娘だ。そして妹の全てを背負った」
捺「失踪…?」
悠「もしこれが世間に知られたらバッシングを受けるのは目に見えている。五十嵐菜穂として、そちらに嫁いだなら藤原の名も傷が付くだろう」
捺「だから、婚約を破棄しろと?御頭首はむしろ早く事を進めたい様に感じましたが?」
悠「あの人は自分の力で全て収められると思っているからな。目障りな菜穂を捨て置けて更に藤原との結び付きが得られるとなれば一石二鳥だ」
捺「実際、そうなのでは?」
悠「…ここまで聞いて引かないのか」
捺「覚悟が出来たと、そう申し上げたはずですが」
そう、どんな面倒事でも。
全部ひっくるめて俺があいつを受け入れたる。
.