男装ホスト.Lie ~私の居場所~
しばらくの沈黙が続く。
捺「…他に用がないなら」
悠「…だめだ」
捺「は?」
喰い気味に俺の話を遮る五十嵐は、ある種の覚悟を滲ませる声で続けた。
悠「渡さない。この婚約は白紙にする」
捺「…何故そこまで?そちら側にもメリットあっての事でしょう」
悠「菜穂の意志に反する」
捺「…そう本人が貴方に言ったんですか?」
悠「いや。だが冷静に考えて…」
捺「心配されずとも。…幸せにします」
悠「だめだ」
捺「…」
何や、こいつは。
電話口で舌打ちしそうになるのを寸での所で堪える。
捺「…他に理由でも?」
悠「…菜穂は、」
捺「…」
悠「あいつは渡さない」
捺「…は?」
悠「あいつを幸せにするのは、俺だ」
それは、思いもよらない応えやった。
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