男装ホスト.Lie ~私の居場所~
雅「俺、思ったんですけど」
慎「ん?」
雅「店、潰しましょう」
慎「……はい?」
思いがけない言葉に上擦った声が出た。
何て言いやがった、コイツ。
雅「“五十嵐菜穂”として生きてる莉依ちゃんに、自分を取り戻してもらうために」
慎「ちょっと待って、意味が…」
雅「五十嵐悠が店に来て、そっから後のゴタゴタの末に莉依ちゃんは家に戻った。でしょう?」
慎「せやな」
雅「十中八九、家に戻らないなら店を潰すとか、そんなん言われたに決まってる。慎さんかてそう、言われたんちゃいますの?翔央を売った時」
慎「……ま、それだけとはちゃうけど」
雅「失う物があるから人は踏ん切り付かへんねん。だったら無くしてしまえばいい」
慎「…一理あると思うで?せやけどなぁ」
雅「惜しい?」
慎「違くて…みんなの生活一応掛かってんねんで?そこ分かってる?」
雅「分かってますけど、そんなんどうとでもなりますよ。本気になれば」
慎「それに、あの娘が今の生活を望んでないかどうかなんて、俺らの推測でしかない」
あの子が“助けて”と言ってくれたなら、
全て投げ打ってしまえるのに。
今は何を信じたら良いのか、分からない。
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