男装ホスト.Lie ~私の居場所~
いろんな感情が溢れて収集がつかなくなり、手をぎゅっと握って俯いた。
…と、襖が静かに開いた。
「あらあら、彼女泣かしたらあかんやないの。嫌やね、この暴力男が」
捺「高梨さん…暴力振ってへんし」
「乙女には大声だけでも十分な暴力やで?もう、ほらお腹減ってるから気が立ってんねん。お腹いっぱい食べて落ちつきんしゃい」
捺「そんなガキちゃうわ」
そう言って高梨さんが食事を机に並べていく。
捺生さんをこっそり見ると、どことなく気まずそうな顔をしていた。
今…言わな。
『…捺生さん』
捺「…ん」
『ありがとう、ございます。このお話、喜んでお受けします』
捺「…そか」
『高梨さん』
「はいはい?」
『私、五十嵐菜穂と申します。…捺生さんの、婚約者です』
「あらあら!」
タイミング悪かったわね、と高梨さんは言いながら祝福してくれた。
捺生さんは、どことなくホッとしている様な表情で、思わず笑ってしまう。
そんな私に、ムッとした顔でなんやねん、と凄む捺生さんはちっとも怖くなくて。
このまま身を任せてしまえばいいかな。
そんな風に思い始めていた。
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