男装ホスト.Lie ~私の居場所~
義兄の暴走と凌の告白
それから二週間が経った。
捺生さんは仕事が忙しいらしく、それでもその合間を縫って連絡をくれた。
と、言っても私は携帯を持ってはいないので凌さん経由で。
最初は二三、言葉を交わしてから電話を代わってくれていたのだけれど、最近では菜穂様、と携帯を手渡してくるだけになった。
私も、捺生さんからの電話に出た時の凌さんの顔に一瞬眉間に皺を寄せるものだから、分かるようになってしまった。
『あ…はい、電話代わりました』
捺「…おう。別に用事はなかってんけど。…今日何してた?」
『え、と…大学行ってました』
捺「へえ…大学行ってる間凌って何してんの?」
『あ…なんか同じ授業一緒に受けてますよ?』
捺「何それ」
『勉強が好きみたい。最初は授業終わってから迎えに来てたんですけど、最近はぴったり張り付かれてますよ』
捺「しんどそ。しかもあのテンションの凌やろ?…まぁ前のよりはマシか」
『マシとか言わないでくださいよ』
でも確かにそうかも、と思いながら笑い声を噛み殺す。
捺「…これ聞くのニ回目やけどさ。凌に何や変な事されてない?」
『え?…大丈夫ですよ、人が変わったみたいに最近は…』
そう、最近じゃ。
ぴったり張り付いている事に変わりはないけれど、前の様に必要以上に触れてくる事はない。
それ以前が異常な事だとは分かっているけど、そこだけは以前の凌さんと変わらなかった事だったから…少し違和感を感じてはいた。
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