男装ホスト.Lie ~私の居場所~




電話が、切られた。










もう誰とも繋がってない携帯を凌さんの胸に押し付け、席を外せ、そう命じたのが聞こえた。




渋るような態度を見せた凌さんも、その有無を言わさぬ悠さんの雰囲気に私の顔をチラッと見た後一礼して部屋を出た。




怖い、二人にしないでー…





















悠「菜穂。何故あんな奴と連絡を?」



『あんな奴って…』









仮にも妹が婚姻関係を結ぶ予定の相手を、あんな奴?




嫌悪感が走る。










『婚約相手と連絡を取る事はそんなにいけない事ですか』



悠「だからそんな必要は無いと先日、」



『正式に私、お受けしたんです。あの人と…結婚します』













覚悟を持って私のために家へ戻った彼と、私はー
















悠「…駄目だ」



『?!…それを私に望んだのはあなたたちでしょう?』



悠「私は違う!」



『どういう意味…ですか』



悠「嫌だ。この家を出て行くなんて、…また私から離れるなんて、許さない」



『悠、さん…?』



悠「…それだ。お前が私の名前を呼ぶ度に自覚してしまう。…妹なんかじゃない、女としてしか見れない」



『…っ?』



















目を見開き悠さんを見つめる。





ゆっくり近づいてくる彼が怖くて、理解出来なくて。





無意識のうちに後ずさっていたけれど、壁に行き当たってその距離が近くなっていった。


















悠「菜穂ー」



『わ、私は…っ、菜穂さんの代わりだけど彼女じゃ…っ』



悠「妹じゃない。分かっているさ。だからこそ…今度こそ、愛し合える。そう、だろう?」



『っ…』













両腕で逃げ道を塞がれる。




もうどうしたらいいのか分からず涙が溢れてくる。
















悠「泣き虫だな、菜穂は。そんなに嬉しいのか」



『ち、がっ…』



悠「ずっと、俺のそばにいろ。もう二度と離さないから…」



『やっ、離してくださ…っ』















二度と、と言う二度が、本当の菜穂さんが居なくなった事を指しているのかそれとも、私が家を出た時の事を言っているのか。




頭に疑問が掠めるが、頭を固定され次第に顔が近づいてきてそれどころでは無くなった。




必死に抵抗する。
けど所詮、力では勝てない。














『っ…助けて凌さん…っ!』














咄嗟に叫んだ声。



と、同時にドアが大きな音を立てて蹴破られた。
















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