男装ホスト.Lie ~私の居場所~
凌「…離れてください」
悠「…何?」
涙で霞んだ目に、壊れたドアが見えた。
鍵を、掛けていたのか。
いつの間に…
悠「誰に向かって口を聞いている」
凌「貴方にですよ、悠さん」
そう言って凌さんは悠さんの側から私を引き寄せ背中に隠した。
繋がれた手に安心して、また涙が溢れるのを彼の背中で必死に堪えていた。
凌「私が今仕えているのは彼女です。主が泣いて助けてくれと言った。相手が貴方でも容赦しません」
悠「生意気な…いつからそんな口をきけるようになった。お前の首を切る事なんて取るに足らない事だと理解しているか」
凌「どうぞ、ご自由に。私は私の仕事を全うしているだけですから」
悠「…ふん。菜穂、」
私に与えられたその名前を聞いてビクッとしてしまう。
反応してしまう位もう長い事そう呼ばれていたのに…返事すら、出来なかった。
そんな私にため息をついて続けた。
悠「驚かせて悪かった。とにかく。今回の縁談は白紙にするから安心してくれ。…お前は俺が幸せにしてやる」
この人には私の声が届いていなかったの…?
話がまるで、通じていない。
眩暈が、した。
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