男装ホスト.Lie ~私の居場所~
悠さんが部屋から出て行って。
しばらく動く事が出来なくて、
凌さんの背中で肩を震わせていた。
凌さんはただじっと、私が泣き止むのを待ってくれていた。
凌「…すみませんでした。ドア、壊れてしまいましたね」
ぽつりと呟いた凌さんの視線を辿れば、見事に外れたドアが見えた。
『…よく、壊せましたね』
凌「火事場の馬鹿力、ですかね」
『なに、それ…』
凌「…“俺”に、助けてって言うてくれたからなぁ」
『え…』
懐かしいおっとりした口調に思わず顔を見上げると、いつもの本心が読めない笑顔でにっこり彼は微笑んだ。
凌「明日には修理の依頼をしておきます。今夜は僭越ながら私の部屋で寝てください」
『え、』
凌「行きましょう」
無機質な凌さんの部屋に入り、勿論ベットは一つで身構える。
けど、前の様に一緒にベットに潜ってくる事は無くて。
ソファで寝ると言い張る私をたしなめ、彼がソファに横たわった。
『…凌さん?』
凌「…」
『凌さん』
凌「…七瀬、です」
『…さっきは助けてくれたくせに』
凌「…」
『…助けてくれてありがとうございました。…おやすみなさい』
凌「…おやすみなさいませ、菜穂様」
凌さんの匂いが残る布団に包まれて。
私はすぐ深い眠りに落ちていった。
途中、凌さんが頭を優しく撫でてくれる夢を見て。
何でこんな夢を、と夢の中で笑ってしまった。
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