男装ホスト.Lie ~私の居場所~




「ねぇ、教科書見せてくれない?」



『え、あ…はい』














一般教養の授業中、不意に隣から声をかけられた。



一応用意された教科書になぞられて進むこの授業は進級に必要なものであるけれど、出席さえしていればいい部類のものらしく寝ている人が多数。



そもそも、教科書を持ってくる人が少ないらしい……それもあって、そう声掛けされたのに驚いた。









顔を見ずに教科書を左にずらし彼女にも見やすいようにする。



そう言えば、家の人以外に話しかけられるのは久しぶり。



しばらく前まで、あんなに毎日女の人と話していたと言うのに緊張する。



とりあえず授業に集中しなきゃ…とノートと黒板に目線を行き来させていた。














「...ねぇ、楽しい?」



『え?』














急な問いかけに、思わず隣に視線を移す。



そこに座っていたのは、今時のふわふわした服を着た、可愛らしい小柄な人だった。








…違和感なく、そう見えた











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