男装ホスト.Lie ~私の居場所~



『本物の菜穂さんが、戻って来るんですか?菜穂さんは何処にいるんですか?』






声が大きくなりそうになるのを、自分の腕に爪を立てて自制する。



生きているなら、何故今まで私は。



今までの人生は何だったと言うのか。










…そんな私の動揺に気づいてか知らずにか、腕に食い込んだ右手をそっと由樹さんの温かい手が重なった。











「彼女が死んだとされた交通事故があった。…自作のな。実際怪我もしたし病院にも運び込まれた。……けど、そこで施されたのは美容整形の手術やったらしい」


『整形?』


「今は日本にいるとこまで突き止めた。いくら顔が違ってもDNA鑑定まで突きつければ本人と確認できる。……お前はどうしたい?」


『どう…?』


「俺らには何が幸せなのか想像する事しかできひん。だから教えて。金持ちで多少の自由を捨てて生きるのか、無一文になるかもやけど外で自由を掴むのか...お前にとって幸せはどっちや」















選ぶ権利が私にあるの?



それなら、
掴む事が出来るのなら、私は……














『……私、…本当の名前で生きたい。まだ、お兄ちゃんに聞きたい事いっぱいある……晴にも、みんなにも謝らなきゃ…、それに捺生さんにも幸せになってほしい…』














涙腺が崩壊し、ノートの上に水滴が染みを作っていく。




ああ、せっかく綺麗に板書していたのに。




横からハンカチが差し出され、慌ててそれで目を押さえたけれど止まる気配はなく、必死に声を押さえた。










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