男装ホスト.Lie ~私の居場所~
扉が、開いた。
『いらっしゃいま……何や』
噂をすればなんとやら。
『お客さん用の扉から入ってこないでくださいって言うてるでしょー…慎さん』
「あ?はは、悪い悪い」
慎さんは歳の割に若く見える。
それを本人に言ったら複雑な表情になるけど。
『どこ行ってたんですか?』
「新しい子探しにふらふらしとったよ。人手足りないやろ?雅がしんどそうやし」
『…慎さんが店に出ればいい話やと思うけど』
「えー?おっちゃんもう表に出れる体ちゃうもん。休ませてくれやー」
『そんなん言って…楽したいだけでしょ?』
「あ、ばれた?」
ある有名ホストクラブの指名率No.1だった慎さんは、5年程前に若くして独立してこの店を作ったらしい。
その頃の慎さんの固定客が未だに慎さん目当てでこの店に足を運んでくれているけど、それに慎さんが応えるのは極稀れだ。
スカウトと銘打って店に居ない事の方が多い位。
まあ…言ったら慎さんは一見適当な人なんだけど。
ここ、ってポイントは必ず抑える辺りさすがだなって思ってしまう。
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