弟のくせに...。


走ってくるのは届のお兄さんの、翼くん。

その声に、少しの安心と不安がよぎる。


「香坂さん、大丈夫?」

「あ……その、届のせいじゃないから、えっと、届は助けてくれて、だから……」


今の現状だけを見ると、あたしが届になにかされたんじゃないかって疑われてもおかしくない。

だからあたしは必死に誤解を解こうとしたけど……。


「大丈夫、ちゃんと見てたから。届が追い払っていたところ」


それを聞いて、安心した。


やっぱり、兄弟っていいなって思った。


「届、翼、何があったの!?」


そう言って駆けつけてきてくれたおみくじのところにいた女の人。


「あ、羽音(はのん)さん」

「ただのナンパ」

「え、あ……」


……ナンパではないよね。
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