カードゲーム
一枚目
何時の事だか忘れてしまったが、確かに覚えている。
空からトランプのカードみたいなモノが落ちてきて、私達が受け取って、それからが地獄。

先生はそのカードを取り上げて授業を放棄。
私達は勉強するでもなく、学校に閉じ込められた。
意外と快適な生活だ。生徒はめっきり減ってしまったし。
何故かって、彼らはカードを差し出して家で教育を受けることを選んだんだから。

今日も家からの便りは無し。
家書万金にあたる、ってこういうことなんだな。

「あ、いたいた。ヤマトー」
聞こえた声は居残り組の和谷中凛《ワヤナカ・リン》。
呼ばれたのは私、榊大和《サカキ・ヤマト》。
カードを渡すのを拒み、結局カードを奪われて軟禁されてる世間で言う負け組。
でもね、惨敗した兵は力を貯えて反撃するっていうじゃない?

「残ってんのヤマトとオレだけだってさー」

…まぁ、貯えてないんだがな!

「みんな条件飲んだんだ?」
「他の奴らからカード奪って先生に提供、これいい条件かなぁ」
「…まぁ、それなりだよな」
それで家に帰れるから。
確かに悪いとは言えない条件。

ま、それは負けた気がするから嫌なんだが。

「で、二人でどうするんだい」
「産んで増やす?」
すばらしい笑顔で顔をくい、と持ち上げる。
近い近い。
「和谷中は冗談が好きだな」
「あ、そう返す?」
心なしかしょんぼリン。
私じゃなかったら本気にしてたかも知れないぞ。

まぁ今の会話で分かっただろうが私、大和は女。で、和谷中は男。
で、二人ぼっち。

すごく危険だが何もないので期待してはいけないぞ。

「さて」
呟いて、空を見る。
小さな影。
落下するそれは手の平サイズが二枚、私と和谷中に。
「今日もまた、戦いが始まった」
空の声、からりと乾いた風。
ふわふわ雲は越えられない、飴の雨は存在しない。
「じゃ、いこか」
「うい」

二人の無謀な冒険者。
夏特有の乾いた日差しが二人の後をついて行く。
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