ママのスキャンダル!
二次審査では簡単な台詞読みと、審査員からの質問を1つ受けるだけのものだったけれど。

さすがに全国大会ではそれだけというわけにも行かなくて。

実際の映画のワンシーンを演じることから始まり、映画の製作スタッフ(もちろんアメリカ人)からの質問を受け、最後は自己アピールの時間が与えられた。

台詞はもちろんすべて英語。

オーディションを受けると決めたときから必死に練習を続けた英会話。

人前で演技をするということもそうだけれど、何よりも英会話がちゃんとできるのかが気になって、何度ももらった台本を読み返していた。

「すごいね~、ちゃんと英語しゃべってるように聞こえるよ」

緊張しているあたしの横で、ママが感心してそう言うのに、あたしは思わずこけた。

「ママももうちょっと時間があったら、練習相手になってあげられたのにね」

残念そうに言うママに、思わず気が抜ける。

「―――なんか、それだけでも女優になったみたいでかっこいいね。今度また違うオーディションも受けてみよっか」

「・・・・・そうだね」

このオーディションはさすがに落ちると思っているのか、それとも何も考えていないのか。

自分の親ながら、ママの考えていることはよくわからない、と思った。

でも、ママの笑顔を見るとほっとできる。

緊張して張り詰めていたあたしの心に、あったかいお日様が顔を出したみたいだった。

ママのお陰で落ち着くことのできたあたしは、台詞を間違えることもなく、質問にもちゃんと答えることができた。

一番の難関は自己ピーアールだったけれど、これは日本語で大丈夫だったので、大好きな動物の事、家で飼っている猫とのふれあいの話をした。

「本番に強いんだね」

と、ママが感心したように言った。

「本当に合格しちゃったりして」

ママのこの言葉にはあたしに密着していたカメラマンも笑ってた。



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