最後の恋はアナタの隣で
すると、その黒髪の男子は、他の二人と私の方へ交互に忙しなく《せわしなく》視線を動かし、


「なっ、何の事だよ? 訳分かんねぇ」

胸の前に広げた両手を小刻みに振って、ひきつった笑いを作った。


「はぁ? お前が“ヤらせて”って言ってきたんだろ」

「は!? 俺、相澤《あいざわ》に何も言ってねぇけど!」

「……」

靴箱の周りには私達以外に誰もいない。


それなのに、バレバレの嘘をつく黒髪の男子があまりにも馬鹿に思えて――そんな馬鹿を相手にしてる自分が、更に馬鹿に思えた。


「……面と向かって言えねぇなら初めから言ってくんな。誰に聞いたか知らねぇけど、ヤリマンじゃねぇよ」

キッと睨み付けてそう言うと、黒髪の男子はキュッと口を結んだ。


「……まじでダリィ」

誰に向けて言うわけでもなくポツリと呟いて踵を返した私は、嫌な事続きで重くなった足を教室に向かわせた。
< 115 / 464 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop