最後の恋はアナタの隣で
……忘れていた“ある事”を思い出した。


そうだった……学校に行ったご褒美に、“千秋”のお店に連れて行くって言われてたんだ。


“千秋”との電話を終えた春樹さんが、ワイシャツのポケットに携帯を仕舞って私に視線を向ける。


そして案の定、その“誘い”を口にしようとした。


「涼。仕事が終わった後――」

「やだ」

私は最後まで聞かずにその“誘い”を拒否した。


一瞬、春樹さんの顔が呆気にとられる。


数回瞬きを繰り返した後で、春樹さんは再び口を開いた。


「俺まだ何も言ってないぞ? 今日は千秋の、」

「行かない」

「ちょっと待てよ、この間約束、」

「行かなくていい」

「は? 何でだよ?」

不貞腐れて言葉を遮る私に、春樹さんが戸惑ってるのが分かる。
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